黒イ世界
彼は動揺している。表情が強張っていた。
“見える”とはどういうことだろう。




「見えるって、何が?」

何かを考えているのだろうか?下を向いたまま、彼は中々顔を上げない。

短い沈黙が流れた。



「…かい。」


「え?」

「…なかのせかい。」


そう言って彼は走って行った。


金縛りはいつの間にか解けていた。

しかし、彼が去ったのにも関わらず、あの硝子の様な目は、しばらく僕に纏わり付いて離れなかった。

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