満月~full moon~



それでも、どうしようもないから。

何もかも諦めるしかないんだ。


覚悟を決めたように顔を上げた先に、俺と同じように社内を見つめている男性を発見した。

俺よりも、少し若い気がする。

食い入るように見つめるその表情は、戸惑いのように感じる。


その男性を凝視していると、ふと彼が俺の方を見た。

他に人がいるとは思わなかったみたいで、驚いた表情をした。

そして、すぐに立ち去ってしまった。


そんな様子が気になって、彼を追いかけようとした。

その時だった。

ポケットに入っていた携帯が震えていた。

それに驚いて気を取られ、完全に彼の行方を見失ってしまった。


そうなってしまったらどうしようもなく、携帯を取り出して確認をした。




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