小指も抱けない彼女

人が、たった一匹のアリと共同生活なんか出来るわけがない。ーーでも。

「聖は、大切な恋人だよ」

愛する事実があるならば、手放したくなんかない。

怖いと思ったのは、それこそ、彼女を愛しているからだ。失いたくないからこそ、恐怖する。


やっと差し出せた指で彼女に触れる。

こんなに小さくても、木漏れ日のような温かさを感じられる。

「聖、もっと近くにおいで」

彼女が望むならと舌先を出す。
すぐに俺のやりたいことをーーいいや、もともと彼女がやりたがっていたことだ。

「……ん」

扇情的な息遣いを舌が敏感に感じとった。

濡れた舌を彼女は舐めとるが、その触感と健気に舐めとる彼女の姿を見ては興奮は湯水。唾液の生成に一翼を担う。

顔から体、髪まで汚してしまったか。ベタベタと溶けた飴が張り付いたかのような感覚は不快でしかないのに。

「夜鞠くん……」

吐息と共に俺の名を呼び、彼女はしばらく俺を愛し続けてくれる。



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