小指も抱けない彼女
「い、いや、違うの、これは、ええと……ミーのもふもふが恋しいなーって、こんな姿で行ったら食べられちゃうもんね」
痛々しいほどの強がりだった。
彼女の本音と向き合った今、彼女は一番落ち着く場所に帰りたがっている。
自分の家に。
二十年は暮らしている我が家が落ち着くのは当たり前だし、母親と共に過ごしたいのは至って当然。
第一に。
「やっぱり、すぐにでも元の体に戻りたいよね」
泣き喚いてもいい筈なんだ。
悪いことなど何もしていない、青信号を渡っていたら轢かれたに相違ない理不尽を目の当たりにしても。
「聖は、なんで泣くのを隠すんだ」
聞きながら知っている。教えてもらわずとも、分かっている。あっけらかんとしたフリは俺に心配かけさせたくないためであり、彼女の口癖。
「泣いたら、余計に悲しくなるんだもの」
涙は拭われた。彼女自身の指で。
「泣かないと、余計に辛くなるよ」
俺の指を差し出せば、彼女が触れてくれる。春のそよ風でも触れたかのような些細な感触。
涙を隠せば辛くなる。彼女も、俺も。
暗い想いを吐き出せば、何でも呑み込むつもりなのに、気を使われてしまう始末。
彼女の優しさだ、でも溝なような気がしてならない。
「俺のせいだから、頼りたくない?」
質問の意図が分からないと顔を上げられた。
我ながら、なんて欺瞞だろうと歯噛みをする。