シャッフル
 そう言うと、彼女は少し俯き再び瞳から涙を溢した。

「……酷なこと言うのね……」

「そう……かもしれない」

「もうプロの世界には戻れないかも知れないのに……」

「だとしても、今まで君を支えてきてくれた多くの人達に何もしないまま去って行くのか?」

「……」

「君を待ってる人達に聴かせてあげよう。最後だとしても。ピアニスト南大寺 茜の美しい音色を……。」

 彼女はゆっくり顔を上げ俺を見つめた。涙を流しながら。

 そして小さく……頷いた――――――――
――――――

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