シャッフル
 彼女は慌ててそう言うと、「じゃあおやすみ」とアパートへ入っていった。

 なんだ……?

 彼女の様子を不思議に思っていると――。

「常務」

 少し怒った様に森岡が俺を呼んだ。

 森岡に顔を向けると車を発進させながらチラッと疑いの眼差しで俺を見る。

「女性が面倒とか苦手とか言いなが今日は随分積極的でしたね。本当は女性が苦手とか嘘でしょ?それとも彼女に一目惚れでもしましたか?」

「ハハ。確かに彼女のピアノ演奏には惹かれたがそれ以上の気持ちはない。話していて楽しい人だったし、彼女とは友達になりたいとは思ったがな」

「……友達……ねぇ……」

 運転しながら森岡はボソッと呟く。

 疑いたい気持ちは俺にもわかる。正直自分でもこんなに積極的に話や番号交換なんかしたこと無かったのだから。

 だからと言って今日会ったばかりの彼女に特別な感情は一切ない。ただ純粋に友人として付き合いたいとは思っている。

 それに……、よく分からないが……彼女とは何かの巡り合わせの様に俺は思えた……――――――――
――――
< 12 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop