君のためにできること
そうこうしてるうちに、予鈴のチャイムが鳴った。

教室の入り口のほうを気にしていると、貴史が姿を現した。

貴史はちらっと私の方を見ただけで、別に気に止めるわけでもなく、さっさと自分の席に着いてしまった。

あー・・・最悪だぁ。


昼休みになると、約束どうり教室に葛城くんがやってきた。

「吉野さん!」

そして屈託のない顔でにこっと笑う。

葛城くんの声に、貴史は微妙に反応したけど、すぐに何事もなかったように席でマンガを読み出した。

私は私で、

朝からずっと考えていた。

今日、葛城くんの家に行くべきかどうかを。

実際にとても気になっていたから・・・。

葛城くんがなぜ、私の絵を描きだしたかどうかを・・・。

「吉野さん、考えてくれました?オレの絵、見てもらえますか?」

「・・・うん。見せてもらおうかなって・・・。」

「マジで?!やったッッ!!」

葛城くんの絵が見たいって思ったのは、私自身の意思だ。

結局は貴史には相談せずに、自分の考えだけで決めてしまった。

こんなに真剣な人を前にして、何も見ずに断ることなんて、

やっぱりできないと思ったからだ。
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