つぼみ、ほころぶ
また手を差し出されエスコートされる。


……多分、嘘をつく相手は、あたしたちの到着を豪華な玄関先で待っていてくれた、ここの女将さんだと思われる素敵な女の人。


てっきり、箱根の観光スポットとかにある開放された温泉や足湯を回るだけだと思ってた。


なのに、ユウちゃんが連れてきてくれた先は、あたしレベルでもひと目で分かる、超一流な温泉旅館だった。


旅館の看板が掲げてある建物は、受付やその他、旅館を運営していく機能があるだけの集合体で、宿泊施設は、敷地内に点在する離れだけみたいなとんでもなく豪華な施設。


これは……きっとあれだ。芸能人やVIPな人がお忍びで泊まったりする、一見様お断りの……とかなんだと思うんだけど。


――ユウちゃんは、何でこんなとこ知ってるんだろう。


やっぱり女将さんだった人と久しぶりみたいな会話を交わしながら、ユウちゃんは慣れた様子で案内をされている。


あたしは、とりあえずボロを出さないように作り笑いを浮かべ、談笑するふたりに並んで歩くのが精一杯だった……。
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