ため息をついた日
自分でぐしゃぐしゃにした優愛の髪を手櫛でなんとなく整えながら、諒哉は釘をさした。
「兄弟が多いのって悪いことじゃないけど、友達の間だとなんとなく気まずいから黙ってろよ。」

その言葉にちょっと引っ掛かった。
「え、他に知っている人いないの?て、いうか私は友達じゃないからいいの?」
段々と小さくなった優愛の言葉に、諒哉は少し怒ったような声を出した。
「そうじゃないだろ!高橋には先に感付かれたから、本当の事を言ったんだ。大体、今まで気付いたヤツなんて一人もいなかったし。みんな俺のことは気楽に騒いで盛り上げるムードメーカー的なヤツだと思ってるよ。」

「そ、そっか。」
「そうだ。だから、」
諒哉はそこで言葉を切ると、落ち着いたはずの顔色をまた赤くして、
「高橋だけ、特別だ。」
優愛の目を見てきっぱりと言った。

「特別…。」

その言葉は心にじんわりと染み渡り、優愛の中でも諒哉が特別な存在になった瞬間だった。
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