ため息をついた日
「俺、T町の"ホテルO"に就職決まった。」
「………、…………、…………、えっ!」
覚悟していた話とは全く違い、理解するのに時間がかかってしまった。
T町の"ホテルO"はベイエリアにある有名ホテルだ。
「ほ、本当にそんな一流ホテルに就職決まったの?」
体調は良くなったものの、精神面ではまだ不安が残る状態で通院はずっと続けている。何ヵ月も療養していた諒哉に、そんな大手での仕事がきまるなんて優愛は半信半疑だった。

「実はさ、俺のバイト先、都心にあるほうの"ホテルO"だったんだ。」
「えぇっ!?アミューズメント施設の店員って言ってなかった?」

すると諒哉はちょっときまり悪そうに
「だって、一度ホテル業務で体壊してるだろ。また同じことになったらカッコ悪いじゃん。」
だから週3~4日の昼間の勤務にしてもらってたんだ、と言う。
(ん?ちょっと待って!)
「バイトが休みの時は、就活してたんじゃないの?」

諒哉はとたんに動揺しだした。
「し、就活は、ほとんどしていません…。ごめんなさい…。」
テーブルに額が付きそうに深々と頭を下げた。

優愛はまたため息をついた。
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