恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
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別にどうでもいい、と最初は思っていた。

タマがどの男と付き合おうが、俺には関係ない。

俺は、わざわざ会社の女に手を出すほど、女に不自由していない。



ガキの頃から女に間違えられ嫌で堪らなかったこの顔が、年を重ねていくにつれ女を引き寄せる道具になると知ったのは中三の夏休み。

高校時代は、愛とか恋とか言いながら一喜一憂している奴らを面倒臭いと切り捨てた。

俺にとって女は快楽以外の何物でも無かった。

性的欲求を満たしたいなら、後腐れの無い一夜限りの女で良い。

ただ、学生時代からのそんな適当な生活の所為か、最近は駆け引きめいたことにすら興味が湧かなくなっていたのも事実。


俺とタマは時間が合えば一緒に飯を食い、冗談を言ったりくだらない話をする。

俺が学生の頃から、女とは築くことの無かった関係。

タマは、いつも柔らかそうな長い髪を一つに束ね、小さな唇をニッと持ち上げて笑う。

俺が見飽きた顔とは違う屈託のない笑み。

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