恋のためらい~S系同期に誘惑されて~

あいつは一見か弱そうに見えるが、実は負けん気が強くて強情だ。

入社したての頃は、俺の隣りに座ることすることすら、嫌そうにしていた。

あまりに嫌そうなので、俺は故意にタマを構う。

憤慨して言い返すタマ。

俺に馬鹿にされつつ、必死になって社員研修をこなそうとするタマを、面白いと思うようになっていた。


そんなタマだから男にフラれて落ち込んでいた時、くだらないと思う反面、俺にしては珍しく同情なんてしたのかもしれない。

お粗末な関係しか持ったことがない俺が慰めるなんて無理な話しだが、忘れるきっかけ位は作ってやろうか。


 自信を持ってその足で立ち上がれるように。



だから何年も経って、ようやく新たな一歩を進んだタマを祝福すべきだ。

今度は上手くやれよって。

なのにどうして、こんなに苛つく必要がある?


直ぐに答えは出た。

社食で並んで飯を食ってる2人を見た瞬間。


……隣りにいるのが俺じゃ無いからだ。


俺には酔っ払うたび、感謝してるだなんだと言ってたが、そいつは友情の範囲内。

俺がいつの間にか欲していたものとは違っていた。


2人の向い側に座っていた成瀬は、俺の感情を見越していたように、俺を見てニヤリと笑った。
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