恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
何でそうなったのかすら、よく理解出来なかった。
私のことなんて眼中に無かった筈なのに。
いつも私のことをからかって、意地悪な笑みを浮かべる顔。
でも仕事になると妥協を許さない、厳しい横顔。
いつの間にか一緒にいるのが、当たり前の人になっていた。
その理由さえ要らないほどに。
永井さんに、あれ程腹が立ったのは笹山との関係を批判されたからなのか。
はぁ、と大きなため息を吐いた。
明日からどんな顔して会ったら良いんだろう。
普通になんて出来るんだろうか。
明日なんて来なければ良いのに――と思っていても時間は過ぎてしまうもので。
寝付けない夜が朝となり、システム課のフロアの前で立ち尽し、私はまた頭を悩ませる。
自分の職場に入るのに、こんなに緊張するなんて。
私がビクつきながら自分の席へ向かおうとすると、笹山のデスク前には先客がいた。