恋のためらい~S系同期に誘惑されて~

どんなに苦しくてもやるせなくても、美味しいものは美味しい。

昨日の夜から、固形物をろくに食べてなかった私は、黙々とオムライスを食べつくした。

ふぅ、と息を吐いてスプーンを置きながら、もう片方の手でお腹をさする。

「あー食べ過ぎた」

「食いしん坊の里沙にはうってつけでしょ?」

私より食の細い早紀は、オムライスを三分の二ほど食べたところで手を止め、私の方を見た。

「ねぇ、さっきの話しても良いかしら」

私が小さく頷くと、早紀はいつものように直球をぶつけて来た。

「里沙は一体どうしたいの?黙って見てるだけで良いの?」

私は何も答えられず、アイスティーのストローをクルクル回し、グラスと氷のぶつかる音を聞いていた。

「……里沙っちの臆病者」

「うん、そだね」

やさしくされても勘違いしないようにって、ずっと思っていた。

一緒にいられるなら、恋人ではなくても仲の良い同僚のままで、と。

心が痛む時があっても、ずっと無視してきたのだ。


「泣く位なら、笹山の話し聞いてやりなさいよ」

私の目から溢れた涙が、まるで雨漏りのようにポタッポタッとテーブルへ落ちる。

「だって……む、無理だよ」

「無理って何なの?好きなら好きって言えば良いじゃない。恋愛なんてタイミングなんだから、今って思った時に飛び込まなかったら、始まるものも始まらないでしょ?」

「だって婚約とか言ってるのに割り込めないよ」

「だから笹山の話しを聞けって言ってんのっ!!里沙ったら勝手に自己完結して、傷口深くしてさ」

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