恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
なんか早紀とテンポが合うんだけれど、あの人。
「早紀が言ってたのはヒロさん?」
早紀がゲットしたいと言ってた人なのかな。
「違うわよ、ヒロは腐れ縁」
そんなことより、と言うと早紀はググッと顔を近付けて来た。
「な、何?」
女の私でも、至近距離になるとドキッとする早紀の顔。
「里沙のご機嫌斜めの理由は?」
そこを突っ込むわけですか、早紀さんは。
本当に参るな、彼女には。
「あの、さ」
私は必死に言葉を探す。
笹山を悪く言わずに、尚且つ簡素にこの気持ちを吐き出す言葉。
この期に及んでも私は、笹山を悪く言いたくないのだ。
私は昨日のキスと、今朝の出来事をかいつまんで話す。
早紀が顔をしかめたのは、婚約と言うくだりを聞いた時だけ。
話し終えると早紀は、あの男は、と一言だけ呟いた。
「取りあえず食べようか」
いつの間にか来ていたオムライス。
話しの腰を折らないように、さり気なく置いてくれたんだね、ヒロさん。
チャラいなんて思ってゴメンなさい、と心の中で詫びながらデミグラスソースたっぷりのオムライスを口に運んだ。