フラれ女と男子高校生
ふいに優しい声が頭上から聞こえた。
「え…?」
見上げるとそこには、制服を少し気崩した男子高校生が立っていた。
そしてハンカチを私に差し出している。
男子高校生は「ん」と言いながら私にハンカチを受けとるように促した。
「あ、ありがとう…」
私は震える手でそれを受け取った。
「じゃ。」
……………え?
男子高校生は私がハンカチを受けとるのを見届けたあと、颯爽と帰宅ラッシュの人混みの中へ消えていった。
あ…このハンカチ、どうしよう。
彼のこと、何もわからない。
これじゃハンカチ返せないじゃない。
私の頬の涙は乾いていた。