歌姫桜華



「どうして、逃げたんだよ……」



 息が荒い中、私に聞いた。



「……姫、なんて…嫌だったから……」




 私はまたブランコに座り、正直に言った。




「なんで、嫌なんだよ」




 奏多も、空いているブランコに座った。





「だから、…守られる立場じゃないんだって」





 私が涙を押し殺しながら言った。



 だめ。泣いちゃ。



 泣いたら……ダメなんだ。



 泣いたって、こんな最悪な現実が変わることはないんだから。


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