異世界で家庭菜園やってみた
「ひと月後、出来上がった鍬を送ってやる。この私が手ずから打つ鍬だ。楽しみにしていろ」

「わたしはディントで待っていればいいんですか?」

「ユーリがここで出来ることは何もない。国に帰って、自分のやるべきことがあるだろう?」

「……」

「分からんのか?」

「え、えっと……」

考え込む悠里を呆れたように見つめていたマリュエルは、はあと息を吐くと「考えろ。そうすれば、見えてくる」と言って鍛冶場の方へ向かおうとする。そんな彼女に、悠里は慌てて言った。

「マリュエルさん!ありがとう!!」

「礼など、まだ早いぞ。それから……マリーでいいから……」

照れ臭そうに言ってから、マリュエルは花が綻ぶように微笑んだのだった。





< 102 / 152 >

この作品をシェア

pagetop