キミさえいれば
「今期の生徒会長を務めることになった

2年1組の黒崎(くろさき)(たもつ)です。

よろしくお願いします」


淡々とした自己紹介だった。


なんてことない、ごく普通の。


だけど、声の周波数とでも言うのだろうか。


柔らかな波形が私の全身を包み込んでいく。


どこか懐かしいような。


だけど切ないようなこの感じ。


一体何なの……?


恐る恐る顔を動かして、彼に視線を向ける。


その直後、私はハッと目を見開いた。


端整な顔にかかる少し長めの漆黒の前髪。


漂う雰囲気は、柔らかくて優しくて。


なんだか時が止まったような気がした。


そして何より、



その名前は―――。




「たもっちゃん……?」




誰にも聞こえない程度の小さな声だった。



だけど、勝手に口が呼んでいた。




私が、この世で一番会いたかった人の名前を……。

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