キミさえいれば
「みんな心配かけてごめんな。

俺が凛の8月の誕生日を忘れてたから、それで凛が怒ってたんだ。

もう大丈夫。

ちゃんと埋め合わせしたから」


そう言って先輩がにっこり笑う。

 
何それ?


作り話?


そもそも自分の誕生日を教えてなかったのは私なのに。


逆に何で教えてくれなかったんだよって怒ったのは先輩の方なのに。


「まぁお前ら普段、仲が良過ぎだしな。

たまにはいいんじゃねぇの?

ケンカしたってさ」


浮田先輩がカーッと大きな口を開けて笑う。


「いやいや、勘弁してくれよー。

同じクラスの俺の身にもなってくれ」


岸先輩は、やっぱり相当先輩が怖かったらしい。


「もう二度とケンカなんかしないよ。

絶対離さないし」


先輩……。


「ちょ、そういう甘いのはやめてくれよ。

お前みたいな整った顔のヤツに言われると、こっちが恥ずかしくなるから!」


浮田先輩、顔が真っ赤だ。


私の方が恥ずかしいのに。


「まぁ、とりあえず帰ろうぜー」


岸先輩の言葉に、私達は生徒会室を後にした。


みんなと別れた後、私と先輩は一緒に校舎を出た。


「凛、家まで送るよ」


「えっ? でも、練習があるでしょう?」


「あるけど、送ってから行く」


いいのかな?


遠回りになってしまうのに……。
< 121 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop