キミさえいれば



私が柳瀬夫妻に初めて会ったのは、21歳の時。


洋二さんと付き合い始めてすぐの頃だった。


当時、柳瀬さんと夕紀さんは結婚したばかりで、新婚さんだったわ。


その半年後に私達が結婚してからも、ずっとお付き合いは続いていて、よくお互いの家を行き来したりしていたの。


だけど……。


さっき洋二さんが言ってたように、柳瀬さんのお父様が突然入院してしまって。


二人は共働きなのに、小さな保まで抱えて大変そうだった。


だから私が妊娠中、保は休みの日によくウチに来ていたわ。


保はとても可愛いし、私も大好きだった。


だけどね……。

 
凛が生まれてからは私、凛のことしか見えなくなってしまったの。


ほとんどは洋二さんが保と遊んでいたけれど、休日のたびに連れて来られるのは正直おっくうだった。


私は洋二さんに、もっと凛の相手をしてやって欲しかったから。


そんな時よ。


保の両親が亡くなってしまったのは……。


保はまだ1歳なのに、引き取り手がいなくてかわいそうだった。


そんなあなたを不憫だと思った。


確かにそう思ったけど……。


でも、洋二さんが『保を養子に迎えたい』と言った時。



私は反対したの……。
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