キミさえいれば
黒崎さんの悲しい告白を聞いて、私は涙が止まらなかった。


赤ちゃんを失ったことは、黒崎さんの人生を大きく変えてしまったんだ……。


「だから私ね、もし産める環境がきちんと整っているなら、10代で産んだっていいと思うの。

凛ちゃんは、赤ちゃんを失う悲しさに耐え切れなくて、自殺まで図ったんだものね。

それに凛ちゃんは、私の目を見てハッキリ言ったよね。

産みたいって……。

私、その意志を尊重してあげたいのよ」


「で、でも……。

本当にいいんでしょうか。

私は赤の他人なのに……」


私の言葉に、黒崎さんの顔が急に険しくなった。


「何言ってるの。

洋二さんの娘なら私の娘も同然だし。

息子のお嫁さんになる人は、他人じゃないわ」


「黒崎さん……」


「本来なら、保がすぐに働くべきだけど。

でも私、父に感謝していることもあるのよ。

教育を受けさせてくれたこと。

だから、保にはちゃんと大学へ行って欲しいのよ」


黒崎さんは、力強く言った。
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