ナムストーンPART3

予兆3

世界各国のマスコミは一様に息をひそめその時を待った。
丸一日がたった。6月10日未明、国連から全世界に向けて
重大発表がなされた。

「全世界の皆様へ緊急連絡です。こちらは国連事務総長のアナン
ムサバキです。これから全世界の良識ある皆様へ、驚くべき事実を
公開しなければなりません。どうか動揺することなく冷静に対処
していただきたいと思います」

全世界が注目する一大発表が始まった。

「ハワイキラウェア天文台が科学研究誌5月号に『3年後の8月25日、
巨大彗星がこの地球に衝突する確率は80%』と報告され、世界中の
天文学者が『何という無責任な重大発表を専門誌に流すのだ、至急訂正
しろ』という抗議の元再分析をした結果翌月に訂正記事を出しました」

ブラジルではサッカーの試合を中断し皆大型スクリーンにくぎ付けに
なった。ニューヨークの証券取引所も急落が続き緊急に取引を閉鎖した。

「全世界の有名天文台に再度詳細な分析をお願いしました。その集計結果が
本日出ましたので発表いたします。グリニッチ時刻8月15日午前1時
ガス状巨大彗星が月に衝突引き続き9時間後の午前10時に地球に衝突いた
します。確率は99%です。この彗星は濃縮拡散を周期的に繰り返す巨大

ガス状彗星で質量はほぼ地球と同じですが拡散したときは地球の10倍の
容積になります。計算では月面に衝突時の密度は地球の4倍、地球衝突時
が5倍位になります。地球通過時間は約30時間、衝突時にはどうなるか
との予測は全く不明であります。どの程度の被害が出るかもわかりません」

深夜の渋谷電光掲示板にニュースが流れる。人々は足を止め近くのモニター
画面に人垣ができる。バーもクラブも一瞬音楽が鳴りやんだ。

「がしかし対策はあります。この後米大統領に詳しい説明をしていただき
ますのでご安心ください。真実をありのままに今申し上げました。いまこそ
全人類大結束してこの彗星の通過に耐え抜こうではありませんか。それでは
引き続き万全なる対策マニュアルをブッシュ大統領にお願いいたします」
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