甘く寄り添って

δ．親密になれて

「榊先生は時下先生にぞっこんなんだ。時下シリーズは全て読破しているくらいだよ。」

「そうなのですか？」

「今夜は徹夜覚悟で榊先生に付き合わされるよ。話題は時下先生とのひとときに決まっている。今日のパーティーが先生にとってどれほど待ちわびていたものかを君にたっぷり話してあげてもいいよ。」

「そんなに薫先生のことを？」

「おまけに離婚されただろ。大きい声じゃ言えないが榊先生の浮かれようったら他人様に語れないほどさ。このこと内緒だよ。」

「はぁ。」

「ところで、貝原さんは長いの？」

「私は５年になります。」

「長いね。大抵２年くらいで秘書は交代するのが普通じゃないかな、随分気に入られているんだね？」

「そうなのですか？」

「君がここに来るよう、時下先生を持ち上げたんだろ、違う？」

「菅原さん、そんなことまでわかるのですか？」

「僕の洞察力はこんなものじゃないよ。今日のこのパーティーを境に榊先生の総攻撃が始まること間違いなしだ。」