甘く寄り添って
機内では時下さんがいつもビジネスクラスを利用しているらしくゆったりできた。

彼は私の隣りでPCを作動させていた。

「悠、何か飲む?」

「私は何でもいいです。」

「アルコールは大丈夫?」

「少しでしたら。」

「白ワインにしよう。」

時下さんはグラスワインを注文してくれた。

彼はPCを閉じてタイム紙に目を通していた。

私は、彼の緩めたネクタイと

ボタンを外したスーツの上着をチラリと見て

彼がくつろいでいることがわかった。

CAがワイングラスを運んできた。

「ありがとう。」

時下さんの低い声が私の耳に心地良く響いた。

「悠、乾杯。」

「乾杯。」

私は何に乾杯するのかを聞きそびれた。

ワインで気分も軽やかになれた。

今、雲の上とは思えないほど静かな機内だった。

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