そばにいたこと
第一章 始まりのとき
北原真衣――

その子が俺の目の前に現れた時、俺は思わずあっ、と声を上げそうになった。
だって、あまりにもそっくりだったから。

俺が愛していた彼女に。

そう、沙耶(さや)に。


封印していた思い出が一つひとつ蘇っていった。
君のすべてに目を奪われて。


俺は君を通して、沙耶に触れようとした。
果たせなかった想いを、遂げようとしたのかもしれない。

だけど、当たり前だけど君は、沙耶じゃない。

君の心を手に入れようとした俺が、愚かだったんだ。


俺がまだ先生、なんて呼ばれていなかった頃。
真衣と同じ、高校生という時を生きていた頃。

俺はよくあるシチュエーションで沙耶に恋をした。

「ずっとそばにいる」なんて、甘い言葉をささやき合ったね。
「君を守る」なんて嘘ばっかりだった。

これから綴るのは、俺がまだ、「僕」という一人称を使っていた頃の話だ。

自信過剰で、変なプライドがあって。
そのくせまだ子供で、何もできなくて。

消したいくらいつらい思い出。
だけど、手放してしまうと俺には何も残らない。

そんな、思い出――
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