そばにいたこと
放課後の教室で、ぼんやりしていた。

いつか、君はここで、一人で泣いていたね。
僕も本当は、泣きたかった。
泣いて泣いて、すべてを流し去ってしまいたかった。
そのころの僕には、流し去ることのできるような問題だとは、到底考えられなかったのだけれど。


その時、ガラッとドアが開いた。


僕は、無表情で振り返る。
そう、この頃の僕は前にもまして、感情を顔に表さなくなっていたんだ。

「春岡くん……」

そこに立っていた君は、狼狽したように僕を見つめた。

沙耶とは、あの日以来一言も話していなかった。
僕の手を握りながら泣いてくれた君の顔を、あの日からちゃんと見ることさえできなかった。
自分があまりにもみじめで、かっこ悪くて。

君は、ゆっくりとした足取りで、僕に近づいてきたね。
そして、僕の気持ちを知っているかのように、君は何も言わなかった。
ただ、寄り添うようにそばに立って、夕暮れに染まった校庭を、共に見つめてくれた。

僕は不思議と、君がそばにいれば息苦しさを感じなかった。
自分を演じる必要のない、安心感からくる気持ちだったのだろうか。
それとも、ただ純粋に君が好きだったからか。

いずれにせよ、君の存在は、僕にとってもうかけがえのないものになっていたんだ。

君にとっての僕が、どのような存在であるか思いを馳せる余裕さえ、僕にはなかったのに――
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