【BL】生まれ変わって会いましょう。
何処をどう走ったかなんて分からない。
ただただ人気のない方向へ必死に足を動かした。
息が上がり切って、足を止めたのは誰もいない空き教室。
「ハァ……ハァ……」
膝に手をついて呼吸を整える。
危なかった…。
要樹まで巻き込むところだった……。
「……ここまでくれば」
“大丈夫だって?”
代わりに紡がれた言葉に、勢いよく上げた視線の先。
これが俺がこの変な時期に転校した理由。
そこには人ではないモノ。
昔から存在し、限られた者にしか見えない。
人々は妖怪―アヤカシ―と呼ぶ存在。
俺は生まれながらに、それが見えてしまった。
見える人間は霊力が高い。
そして妖怪達はその霊力を喰らう。
人の霊力を喰らった妖怪は力を手に入れ、
他の妖怪達を統べるらしい。
らしいと言うのは、俺も父さんから聞いた話だから
確信は持っていない。
ただ一つ分かるのは俺はこの妖怪達に命を狙われているってこと。
小さい頃から襲われるのは慣れっこで、もう何てことはなかった。
けれど最近は俺の周りの人間にまで被害が出始めてしまった。
妖怪は見える者にしか触れられない。
けれど妖怪が操った物に人は触れられる。
あの日も学校で妖怪から逃げ回っているとき、俺を目掛けて投げられた机。
それを俺が避けてしまったがために、通りかかったクラスメートに直撃してしまった。
その時の光景を思い出すと怖くなる。
頭を振って必死にその映像を消す。