彼が虚勢をはる理由





仕方無く、一人で寂しく下駄箱に向かう。
ローファーを出そうとしたら、夏野君が下駄箱に来るのが見えた。


「夏野君って、部活とかやってないの?」

「…………。」


くそ、シカトされた。
夏野君は転校から一ヶ月以上経つのにあまり馴染もうとしないから、当然のように友達とかは増えてないようで。
こうやって接点を見つけて話しかけないと、ちっとも仲良くなれそうにない。
せっかくのイケメンなのに、本当に勿体無いんだけどな。


「夏野君、じゃあね。また明日」

「……おぅ」


ようやく返事が来た。だけど、とても短い。
何なの? 夏野君は、人と絡んだり、喋ったりするのが嫌いな人なの?
……まぁ良いや、挨拶が返ってきた事だけでも、満足しようかな。

考えてみれば、私は夏野君と、殆ど会話した事が無いって気付いた。
夏野君は周りとあんま喋ってないようだし、果たして夏野君とマトモな会話をした子はいるのか…?



「……何だよ? 俺の顔に、何か付いてるわけ?」

「へ? ……いや、別に?」


どうやら、考え事をしながら、夏野君の顔をガン見していたらしい。
機嫌悪そうに私の顔を睨んでくる夏野君を見てたら、何だかおかしくなってきた。





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