彼が虚勢をはる理由





「…大丈夫って、何が?」


私がハルにそう聞き返すと、ハルは大きな溜め息を吐いた。


「大丈夫かって、香苗のコトに決まってるじゃん! こっちが聞いてるんだから! 何だかボーッとしてるし、号令は聞き逃してるし、掃除なのに机は下げないし、下げてからもボーッと突っ立ってて邪魔極まりないし。阿呆か腑抜けかのどっちかでしょ」


…今日のハルは、なかなかズケズケと鋭い。痛い所を突いてくる。
そのままハルは、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


「香苗、本当に大丈夫なの? 夏野とかと、あれから何かあった? 香苗は一応病み上がりなんだし、無理しちゃ駄目だよ」


"あれから"というのは、朝の揉め事の事だろうな。
私自身が昨日は風邪で休んでいて、今日は病み上がりの状態だったという事は、ハルに言われてようやく思い出した。
私はそこまで考えて、ハルに笑ってみせた。
ちゃんと笑えているかどうかは、ちょっと自信が無いんだけど。


「大丈夫だよ、ハル。ちょっと知りたい事も、考えなきゃいけない事も、伝えなきゃいけない事も多すぎて、頭がパンク気味なだけだから」

「それ、大丈夫って言わないから。試験も近いんだし、無理しちゃ駄目だって。……何か香苗、交通事故か何かに遭いそうで怖いなぁ」

「何だソレ」





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