彼が虚勢をはる理由





舞子の言葉にドキリとしながら、私はサンドイッチを齧る。
言われてみれば、私は確かに大胆な事をしでかしたんだ。今更照れくさい。


「…ハルも心配してるよ。香苗は暴力的な人嫌いな筈なのに、あまり喋らない、怖そうで暴力的な人と仲良くしてるって」

「心配してくれて、ありがとね。でも、私は大丈夫」


傍から見れば、私は確かに、暴力的で怖そうな人と仲良くしているように見える。
夏野君の遅刻はまだ毎日のように続いてるし、こうやって暴力沙汰で呼び出さている。

だけど本当は、夏野君は天然ボケに近い人だし、意外に面白くて優しいし、何よりその行動には理由がある。
遅刻してる事にだって理由があったし、最近の暴力沙汰にだって本当は理由があると思えてならない。


私はやっぱり照れくさくて、この話題を続けたくなくて、舞子に違う話題を振る事にした。


「……そういや舞子、最近は部活どう?」


私とハル、舞子の三人の中では、舞子だけが部活に所属している。
今日も舞子の鞄の横には、テニスラケットが置いてある。


「良い感じだよ。このまま頑張れば、秋の大会の選手に選ばれるかもしれないって、コーチに言われたんだ」





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