彼が虚勢をはる理由





「ソイツが連中に具体的に何をされてたのかは、俺は今でも知らない。連行された翌日は、ソイツに必ず絆創膏と痣が増えてた事だけは分かってる。ただ、ソイツはやがて学校を休みがちになり、全く学校に来なくなって、……あげくの果てに、ある日急に転校しちまった」


夏野君の友達は、その人達に殴られる日々を送っていた。絆創膏と痣は、その証拠以外の何物でもないんだろう。
それに耐えかねた友達は、逃げるように不登校になり、しまいに転校しちゃったんだろう。友達である夏野君には、何一つ話す事は無く。

大事な友達に何一つ相談される事も無く、その苦しみに気付く事も出来ず、ある日突然目の前から姿を消されてしまった。
こんな悲しくて、寂しい話ってない。私の知らない世界。

夏野君は寂しそうに笑ってから、話を続けた。


「……それから、俺は考えるようになった。俺がソイツの事をもっと気にかけてたら、ソイツは俺達と一緒にもっと笑い合っていれた、こんな事にはならなかったんじゃないかって」


夏野君の言葉が、想像を絶するくらい、重たい。
夏野君の"人に暴力を奮う理由"は、私の想像以上にヒリヒリしていた。





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