ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ

思いもよらないことを言われて、私の心 臓は大きく跳ねた。ドクンドクンと、脈 も速くなる。

私が硬直したのを「話を聞く姿勢」と捉 え、海君は話し始めた。

「殺人っていうのは……。夫の浮気相手 を殺したから。

逮捕された伊織の母親は父さんの妹で、 俺の叔母に当たる人なんだ。

伊織がイタズラしても笑って許してるよ うな温厚な人だったから、殺人の罪で捕 まったって聞いた時は俺も信じられな かった。叔母さんは、旦那さんの浮気相 手に離婚を要求されて、怒りに負けて とっさにナイフを手に取ったと話して る。本人は殺意を認めた。

いくら叔母さんとは言え、俺も身内だか ら、昔、違う土地からこっちに引っ越し てくる前までは、色んな人に白い目で見 られた」

「もしかして、出会ったばかりの頃、海 君が不良っぽかったのって……」

「うん。周りの人間に対する、精一杯の 抵抗。俺は俺の正しいと思うことを貫 くっていうアピールでもあった。ヨウに 出会ってからは、そんなことどうでもよ くなったんだけど……。

伊織は俺以上に荒れて、少年院出たり 入ったりを繰り返してて……。どんどん 孤独になっていった。

だからってわけじゃないけど、昔から仲 良くしてたから、俺が伊織を支えて元気 にしたいって思ったんだ。

伊織と俺はそっくりで同い年だったからか、昔はよく知らな い人から双子に見られてた。いつも一緒 にいたし、どっちも男だから、同じ服を 色違いで着せられたりとかしてたし」

「……男!?」

伊織さんは男だったの?
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