ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ

「伊織のこと、助けたかった」

海君は言った。

「俺は、叔母さんが…伊織の母親が悪い とは思えなかった。どう考えたって、浮 気して妻を裏切った叔父さんが悪いって 思ったし。

でも、世の中はそんな風に見てくれな い。伊織んちの近所の人も、親戚も、テ レビのニュースキャスターや週刊誌の記 者も、伊織の母親を殺人鬼呼ばわりし、 そう書き立て、報道してた。

人の命を奪うということは、それほど大 きいものなのかもしれない。人の道を外 れた行為なのかもしれない。で も……!!だったら、伊織の母親の悲し みは、誰が理解してくれる!?」

「海君……」

「伊織は長い間、そのことに苦しんだ。 母親を救えなかったのは、子供の自分が 無力だからだって。そうじゃないって、 俺は何度も言い聞かせた。

伊織は俺との連絡で楽になるって言って くれたけど、それも一時的なものでしか なくて……」
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