ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ

海君は、今もきっと、伊織さんと連絡を 取り合っている。

「伊織さん、今、どうしてるの?」

「…………」

話すのをためらうかのような間。

「もう、いないんだ。

……伊織は、自殺した。俺達が高校を卒 業したすぐ後に」

「……!!」

言葉が出ない。

自殺……。今まで、何度か私の頭によ ぎった二文字。でも、結局死ねずにこう して生きている。

生きていることに何の価値も感じないの に、「もしかしたらもっといいことある かも」っていう不確定な希望や「死ぬの が恐い」っていうしみったれた弱さがじ わじわと心に広がり、私に死を拒ませて いる。伊織さんは、それが出来ないほど に……。

想像を絶する苦しみと失望の中に、伊織 さんはいたんだ。










《Ⅳ 伊織…終》
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