Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
手紙
可愛い “Angel”ina へ




貴女が職員室で騒ぎを起こした日のことを、憶えていらっしゃいますか?


投げつけたものを捕らえ、その瞳を見た時に、私は目に見えない「何か」をこの手で受け取ったような感覚を覚えました。


今思えば、この時が私たちの始まりだったのかもしれません。



貴女の告白を聞いた時に、私は自分の中に眠っていた想いに気付きました。


私が狡い人間であったために、貴女の心がガラス細工のように繊細で脆いことを知りながら、1年以上もの間、偽りの言葉を吐き続けて深く傷つけたことを心からお詫び申し上げます。


この行為は、私にとっても非常に辛いものでしたが、貴女の方がその何倍も…いえ、計り知れない程辛かったことでしょう。



今更、このようなことを書くのは不実だとは思いますが、私にとって貴女こそが生涯の伴侶だったのだと痛感しています。


この手紙に同封したものは、一度たりとも言葉にすることはありませんでしたが、私の本心です。


貴女がこの手紙を読む頃には、私はここには居ません。


今の貴女にとって、私の言葉は、徒に貴女を悲しませるだけでしょう。


今迄、散々貴女を泣かせてきましたが、泣かせることは私の本意ではありません。



できるだけ早いうちに、私のことは忘れてしまって下さい。


貴女は若く、そして誰よりも美しい…、貴女の青春はこれからです。


私の後を追うようなことは決して考えず、多くの人と出会い、沢山の恋をして、人生を謳歌してください。


これが私の、貴女に対する願いです。



蕾から大輪の花を咲かせ始めたばかりの貴女が、私のようなおじさんを好きでいてくださったこと、とても嬉しく思っています。


ありがとう、本当にありがとう。


何度お礼を申し上げたところで、まだ足りない程、感謝しています。



私の旅立ちは、人よりも少しばかり早いものとなってしまいましたが、60年…いえ70年後に同じ時間を共有した友人として、またお会いいたしましょう。


その時には是非、貴女が淹れたコーヒーを飲ませてください。





坂下 和


 

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