Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
屋上前は、少し冷える。



坂下が、くしゃみを1つする。



「長いことここに居たら、身体に障りますよね?

もう、戻ろっか…。」



階段を1段下りたところで、腕を掴まれた。



次の瞬間、目の前にネクタイの結び目が見えた。



数秒経って、私は坂下に抱きしめられてるのだと分かった。



こんなチャンス、滅多にない。



坂下の背中に手を回したかったけど、そしたら坂下は私を抱く腕を解きそうな気がしたから…。



私は、ただ抱かれるままでいた。



どのくらい、こうしていたんだろう?



私の頬に、水滴が落ちた。



見上げると、坂下の涙だと分かった。



私の視線に気付いたのか、抱きしめていた腕を解いてハンカチを取り出すと



「目にゴミが入りました。」



そう言って、涙を拭った。



「このことは…、忘れてください。」



坂下はそう言い残すと、階段を下りて行ってしまった。



ずっと私を拒み続けた坂下が、何故いきなり抱きしめたのか?



そして、あの涙の意味は?



頭の中がふわふわしていた私は、それらを考えることもなく立ち尽くしていた。



「あれだけ強く抱きしめておいて、忘れろなんて…無理。」












 
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