Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
提琴
卒業式の1週間前、私らの送別会が行われた。



去年の送別会では、坂下がギターを披露してくれた。



坂下の離婚が成立して以来、午後からHRだけの日は、いつも蒼が便宜を図ってくれた。



「坂下先生のとこ、行ってこい。

風邪で早退ってことにしておいてやる。

僕って、優しいだろう?」



最後の一言は、余計だけど。



それさえなければ、憎まれ口叩くことなく素直にお礼言えるんだけどな。



今日はそんな話が出なかったから、ダメみたい。



送別会なんて、退屈なだけなのに…。



今年も教員有志で、寸劇と演奏をやるらしい。



幕が開くと、1台のピアノの前に教頭が座っていた。



ナントカ…パン?の練習曲の第何番だか…は聴く価値あるって、坂下が話してくれた。



何だったかな?チョコレート菓子の名前にもなってるやつ…。



アトで蒼にでも聞いてみるか、クラシック好きだって言うし。



そんなことを考えていたら、いつの間にか蒼もステージに立っていた。



蒼の部屋でエロ本探ししてた時に、そんなものもあったっけ…と、奴が手にしていたヴァイオリンを見ていたら思い出した。



いつも自信満々でチャラチャラしている蒼だけど、この時は真剣な面持ちでヴァイオリンを構えた。



コイツ、元が良いんだから、いつもそういう表情をしていたら良いのにな…。







 
< 209 / 243 >

この作品をシェア

pagetop