Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
「カズ、お前…アンちゃん騙して持ち込ませたのか?」



心のどこかで、ホントはダメなんじゃないか?って分かってたのかもしれない…。



ツライ治療にも、泣き言ひとつ言わない坂下。



ううん…坂下の場合は治療じゃない、1日でも長く生きらせる延命措置だ。



だから普段頑張ってる坂下に、ご褒美をあげたかった。



「ちっ…。」



坂下が舌打ちするなんて、珍しい…。



坂下は、渋々手にしたチョコを箱に戻した。



坂下の病気が悪化するようなこと、あってはならないから…。



「和さん、これは持って帰るね。」



私は坂下の手から、チョコの箱を取り上げた。



「院長、1つだけでも…。」



坂下が懇願したところで、院長の答えは変わらなかった。



ため息をついた坂下が、私に言った。



「アンジェ、今すぐ1つ食べてください。」



「えっ?」



何で坂下のために作ったものを、私が食べるんだろう?



坂下が急かすから、言われた通りにする。



チョコを飲み込んだ途端、坂下がすかさず…。



キスをした。



私の口の中に広がっているチョコの風味を奪い尽くすかのように、貪っていった。



坂下、人前でキスするの嫌がってたのに…。



「和さん、院長がいるのに…。」



唇が離れた途端に私が言ったら、坂下は院長を一瞥した。



「あぁ、まだいらしたのですか?」



院長は、呆れたように両手をあげて肩をすくめると



「アンちゃん、カズの世話頼む。」



そう言って、病室を出て行った。



坂下が手にしたチョコを、私の口に近づける。



「アンジェ、あーんしてください。」



私はチョコを口にしながら思う、6個は多すぎた…。



3度目のキスが終わっても、次のキスを心待ちにしてる坂下。



そんな坂下を焦らしてみたくて、口の中でゆっくりチョコを溶かしていった。










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