【完】そろり、そろり、恋、そろり
あれから2人とも照れて笑って、幸せな気持ちになって、お腹が空いたとご飯を食べて、それぞれに入浴も済ませた。


私が入浴を済ませて寝室に行くと、ベッドの上には眠ってしまった拓斗君がいた。いつも私より後に寝る拓斗君、今日は珍しく先に眠ってしまった。相当、気が滅入っていたんだろう。起きそうにないくらいに、ぐっすりと眠っている様子だ。


彼を起こさないように気をつけながら彼の顔を覗き込んだ。優しくて、けれど芯のある大人の男の顔をした拓斗君も、今は少し幼く見えて、愛おしさがこみ上げてくる。


……触れたい。私も静かに横になった。彼の整った顔の輪郭に沿うようにそっと触れた。導かれるように、彼の頬にそっとキスを落とした。


彼の為にも、自分の為にも、自分に嘘をつかないで、“今”を精一杯に生きていこう。





「ありがとう、拓斗君」


ありがとう、私の傍にいてくれて。ありがとう、私に暖かな気持ちをくれて。


ありがとう……、私と出会ってくれて。





「おやすみなさい」


また、明日。
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