だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





零れ落ちる涙と、漏れる嗚咽を止めることが出来ない。

優しく抱き締めてくれる圭都の腕も、今は苦しさを増すばかりだった。




「泣きやめ、とは言わない。でも、湊の残したものをちゃんと見てやってくれ」


「でも・・・今更なにを・・・っ」


「『今だから』だ」


「え・・・?」


「『隠した』ということは、理由があるはずだ。すぐに見つかってはいけない理由が」


「理由・・・?」


「そう。時雨が湊の『死』と向き合って、初めて見つけられる場所だったじゃないか」


「あ・・・」




確かに、圭都の言う通りだ。

今でなくては絶対に見つけることなど出来なかった。

『湊の部屋の中を探す』という気持ちになれるまで、絶対に見つけることの出来ない場所だった。




「答えは、きっと。その箱の中にある」




圭都の声は強く響いた。

私の手にある箱が、急に重くなった気がする。




これはきっと『パンドラの箱』。

この中には、私の悲しみや苦しみが詰まっている気がする。


逃げたかった現実も。

失った悲しみも。

湊が此処にいないのだと、理解する物も沢山。


開けてしまえば、きっと。

そういうものに押しつぶされてしまうだろう。

正気でいられる自信すら、今の私にはない。




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