だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「湊、夜中に起きたりしてなかったか?」
「・・・わからない。本当に憶えてないの」
「そうか。じゃあ、あくまで推測だが。湊は夜中のうちに自分の部屋にその箱を移したんだと想う」
「なんのために?」
「わからない。でも、何かを残すために」
「何で『残す』必要があったの?そんなのまるで――――」
自分で言葉にしようとしてハッとした。
まさか。
そんな。
私の表情を見て、圭都は苦しそうに笑った。
その顔は今にも泣きだしそうで、それを必死に堪えているようにも見えた。
「・・・わかってたんだろ。自分がいなくなることを」
「そんな・・・」
「そうじゃなきゃ、何かを残そうなんて想うもんか」
静かに声が響いた。
部屋中に圭都の声が充満したように感じた。
息が、詰まる。
圭都の言うことはもっともで。
私も全く同じ結論を頭の中で描いていた。
こんな時になっても、まだ想う。
私は、湊のことをこんなにもわかってあげられなかったんだ、って。
「私は・・・・結局何もわかってなかったんだ・・・」
へたりと床に座り込んだ。
湊。
一人で自分の命を抱えて。
貴方は何を想ったの?
私に一体、何を残したというの?
そんなもの欲しくなかった。
目の前で『死にたくない』と。
泣き叫んでくれた方が、ずっと良かったのに。