だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
待って・・・?
そんなのおかしい。
だって現に圭都と湊は歳の年の差がある。
それなのに、快斗さんは湊が一歳になる前に亡くなってる、って。
一体、どういうこと?
「ケイトさんという字は、どんな字を書くの?」
「え・・・、あ。母の『圭』の字と『都』という字を書きます」
「そう。彼女は北斗七星の『斗』の字は、使わずにいてくれたのね」
圭都に向かって問いかけるママ。
その表情は少し苦しそうだ。
ママの愛した遺伝子が、違うところで受け継がれている。
ママを一生苦しめる事実のはずなのに、どうしてママはこんなに冷静に受け止めているのだろう。
ママは一度目を伏せた。
そして、しっかりと圭都を捉えた。
その目は迷いなんて一つもなくて、何か大切なことを伝える時の顔だ、と思った。
「あなたは、確かに快斗と圭子さんの子供よ。でも、あなたの出生にはもう一つ秘密があるの。その事実を一生口にしない、と。私は柴田に関る全ての人に約束させた。何一つ、柴田に頼らないことの代わりに」
そうまでして、ママが守りたかった秘密。
それを聞くことが出来るのだろうか。
「それは、・・・私が自分で知らなくてはいけないことなのだと思います。受け止める義務も」
「とても辛いことよ」
「構いません。それを乗り越えるために、此処まで来たんです」
辛いことを。
苦しいことを。
乗り越えるために此処にいる。
そうでなければ、圭都をこの家に連れてきたりはしなかった。
大丈夫。
二人でいるから。