不器用恋愛


「蒼ちゃんね、凛々しくて綺麗だけど、気を抜いた時は可愛いよ。多分、誰でも参る。そんな顔する。気付いてないだろうけど」



カウンター越しの加地さんが、目を細めて、優しくあたしの頭を撫でる。


「口説いてるよ?間違いなく」


ふわり、とその空気のままに笑った加地さんがくらりとするくらいカッコ良くて、本当、勘弁して。


加地さんは啓吾とは違った雰囲気をもつ柔らかい綺麗な男の人だ。いつも優しくて、甘い言葉はくれるけど、この方向の甘さは初めてで。



「…加地さん。あたし酔ってます?」



言っとくけど、大人の会話の駆け引きを楽しむなんてスキル持ち合わせてない。
心臓に悪いから、やめて欲しい。

加地さんはおかしそうにあたしを見る。


「いや、まだ大丈夫だと思うけど?」


「…ですよね」


酔ってるのか、なんなのか。


今日は不可解な事が多過ぎる。


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