恋愛しない結婚


「夢……」

何度も唇を重ねながら、奏の手は私の背中から胸へと動き、そのふくらみの形をやんわりと変える。

反対側の手は相変わらず私の背中を撫で続けていて、私はその心地よさに次第に夢中になっていく。

体の芯からざわざわとした震えがせりあがってきて、脈の速さはかなりのもの。

過去につきあった恋人とのどんなキスよりも、指先の動きよりも、吐息の優しさよりも、私の深いところまで染み入る心地よさ。

けれど、ぎゅっと私を抱きしめる腕の強さや唇の優しさを愛しく感じながらも、何故か不安な気持ちが消えなくて、奏の唇の動きに追いつけず、ぼんやりとただ受け止めるだけ。

差し入れられた舌が私の舌をからめとっても、上手に反応できずにいると。

「……あっ……いたい」

唇に感じた痛みに思わず声をあげた。

「な、何……?」

痛みに驚いて、目の前にある奏の瞳を覗き込むと、不機嫌さを隠そうともしない光があった。

「何考えてる?俺のことじゃないよな」

低い声が私を責めるように落とされて、ぴくりと体が震えた。

「他のこと考えてた?何?今までの男のこととか?」

「ち、違うよ、そんなこと……」

考えてない、と思う。

今までこんなに気持ちよくキスを交わしたことなかったなあって思っていたのって、違うと思うけど。

でも、私がキスに集中してなくて、他のことを考えているって、よくわかったな。

「俺が気持ち注いでるのに、夢の気持ちは俺以外のことを考えてぼんやりしてただろ?」


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