恋愛しない結婚
額と額がこつんと合されて、唇の端をかすめるように奏の唇が撫でた。
たったそれだけのことで体はびくんと震える。
「奏……」
小さく呟いた私の声に、奏は「ん?」と答え、私の顔を覗き込んだ。
私をじっと見つめる強い視線にくらり。
整った顔を間近に寄せられると、それだけでそれは武器になるんだな、とぼんやり思いながら、ふっと体が奏に倒れこみそうになった。
けれど、奏が見せるこのスムーズな流れが私の中にある不安をさらに煽る。
昼間からずっと気になっていた事が頭から離れなくて、奏に流されてしまいそうになる私の心にブレーキをかける。
「どうした?」
相変わらず色っぽい顔と声。
「慣れてる?」
「は?」
「奏、女の人に慣れてる?私は、今までこんなに甘い言葉で攻められたことなんてないし、嬉しいって思える言葉をかけられたこと、ないし。それに、いきなりプロポーズだし。奏って、なんだか恋愛に長けてるみたいで、妬ける」
「は……?」
私がこんな事を聞くなんて、予想もしていなかった展開なんだろうな。
初めて見る奏の戸惑う顔が新鮮で、再び私の心拍数は上昇。