海がみたい
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「海がみたい」
一緒に過ごすと口約束さえ許さなかったクリスマス。それを一週間後に控えたある夜。
深夜に車を走らせて、まだイルミネーションの煌びやかな灯りが輝く通りを過ぎて、
ただ、真っ黒な海へ向かった。
空気が澄んでいて、
星が静かに散らばって、
波の音だけがザァザァと静寂を飲み込む。
月夜に照らされた海面はそれでも真っ暗で、吸い込まれそうな魅力があって、
「何だか怖いね」
呟いたその冷たい手をギュッと握った。