隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
「お父さんに聞いてみようか」
私の提案に顔をほころばせる。
よかった。笑顔になってくれて。
布団干しをあきらめ
私は桜ちゃんと一緒に彼の仕事部屋に入り、一生懸命説明すると
「いいでしょう」
彼は仕事を中断し
私達にそう言った。
「アルバイトは家の中だけ。お風呂掃除で20円。玄関掃除は10円。いくちゃんママのお手伝いをする事」
単価安っ!
それでも桜ちゃんは大喜び。
「金額が貯まったらアルバイト終了。そこからはお手伝いにして、無料で手伝う事。これが条件」
「はいっ」
元気に返事する桜ちゃん。
いいのかその条件で
「ではお風呂を掃除してきて下さい」
紀之さんに言われ
桜ちゃんは走って部屋を出て行ってしまった。
「安くない?」
眉間にシワ寄せて聞くと笑われた。
「外でアルバイトされるよりいいでしょう。目標を持って働くのはいい事です」
そうか
そうなのか。
「お隣のお母さん達にも言っておいた方がいいですよ。桜に甘いからあと1000円足りないってバレたら、すぐ出しそうだ」
さすが紀之さん。
お見通しだ。
「それよりですね……もっと問題がありますよ」
ちょっとだけ難しい顔をして
彼は私の手を取り机の上のパソコンに注意を向けさせる。
「桜の欲しいのって、すごい人気でお店で売ってないんですよ」
「そうなの?」
あのオレンジの猫はそんな人気なの?
何か芸ができるの?
「入荷してもすぐ売り切れって、小倉さんが言ってました」
「小倉さん?」
どこの小倉さん?
「8時から菊川さんとテレビに出ている小倉さんですよ」
当たり前って顔で言われてしまった。
友達か?小倉智昭さんと。