隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話


「これはガンプラです」

そして夫は
優しい笑顔を見せながら堂々と言う。

その笑顔に騙されてなるものか。

「私は何て言ったでしょうか?」

「『お気に入りの白い花瓶にヒビが入ってショックだわ。どうしよう』そう困っていたので『僕が似たようなのを探して買ってきてあげる』って言いました」

他人行儀な会話は
軽いバトルの始まりを示す。

桜ちゃんは大きな丸い目をキョロキョロさせて
私と彼の顔を見比べる。

「花瓶がどうしてガンプラになるのですか?」

このガンダムに水はどこから入れるの?
花瓶の役割はできるんでしょうね。

「同じ白じゃないですか」

にっこり微笑むその顔が憎らしい。

てか
何その理由づけ。

「同じ白ならいいの?ガンプラじゃなくて米にしてよ」
米も白いぜ!
こしひかり買ってこいや!

「郁美さん。前に言ってましたよね」

「なんて?」

「キスマイの北山君が好きだけど、いざ目の前に藤ヶ谷君と玉森君が現れたら、きっとそっちに行くだろうと……」

黙ってたら
桜ちゃんが「言った」と喜んではしゃぐ。

「だから……それなんです」

「はぁ?」

「花瓶を買おうとして選んでいたら、すぐ横の特設会場でガンプラが売ってまして、そっちに行ってしまいました」

おのれ
そんな理由で北山君を出すな!
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