隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
ライブが終わり
人が会場から去った後
延々と
その場所でお説教が始まる。
なぜ勝手に手を離したのか
紀之さんはたとえ愛する娘にでも容赦なく
いや
愛する娘だからこそ
しつこい
説教がしつこい
会社の上司に持ちたくないタイプだ。
桜ちゃんはパイプ椅子に座ったまま
ギュッと手をグーにして膝に置き
泣きながら彼の説教を受ける。
かわいそう。
「もういいじゃん」
って私が言うと
「二度と同じ過ちをさせないように!」
逆に怒られてしまった。
ドラッグ防止のような説教だ。
「だって……いくちゃんママが、まいごになったらこまるから……イスにすわらせてあげないと……まいごになっちゃう」
桜ちゃんはそう言って大泣き。
桜ちゃん
私の為に座る場所を探してくれたんだ。
「ごめんね。ありがとう」
思わず桜ちゃんをギューっと胸に抱く私。
「郁美さんは桜が心配で泣いてたんだぞ」
まだ言うか田辺紀之!
「もういい。私が絶対手を離さないから大丈夫」
「さくらもはなさないもん」
ふたりで言うと
やっと説教終了。
あぁよかった。